「挑戦は、贅沢である」。Pacific Meta岩﨑翔太が金融の民主化に張る理由 – ZEROWORKS(ゼロワークス)
EXECUTIVE INTERVIEW
No.008
EXECUTIVE INTERVIEW

支援は41カ国。金融を民主化する

COMPANY
株式会社Pacific Meta
NAME
岩﨑 翔太
CATEGORY
Web3・ブロックチェーン
READ
約31分 / 全5章
150 Views#Web3#スタートアップ#グローバル展開

株式会社Pacific Meta代表取締役の岩﨑翔太さんは、東京大学在学中に株式会社終活ねっとを創業し、2年で大手IT企業グループへ売却した。2020年には「Forbes 30 Under 30 Asia」に選ばれている。経歴だけを見れば、順風満帆に映る。

その岩﨑さんに「一番苦しかったこと」を尋ねると、「ハードシングスとは捉えていません。贅沢なので」という短い答えが返ってきた。

この感覚は、売却後の日々から生まれている。時間にも余裕にも恵まれ、好きな時に好きなだけ友人と遊ぶ生活を手にしたが、期待していたほどの充実感はなかった。自由になって初めて、自分が本当に好きなことがわかったという。

2022年8月、ブロックチェーンに全力で張る会社としてPacific Metaを創業した。共同創業メンバーは4名である。創業から約4年で、グループ累計300件以上・41カ国以上のプロジェクトを支援するまでに拡大し、シリーズAで約6.6億円、累計で約10億円を調達している。2026年に入ってからは、2月にキリフダ、4月にKenpalをグループに迎え、ブロックチェーンとAIエージェントを手がけるKomlock labも完全子会社化した。

「テクノロジーは、何かを民主化するものだと思っている」と岩﨑さんは言う。インターネットがメディアを民主化したように、ブロックチェーンは金融を民主化するという考えである。

連続起業家が見据える「オンチェーン金融」と、AI時代の生き方を、本人の言葉でたどる。

テクノロジーは何かの民主化だと思っているんです。

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SECTION 01 | 会社と経営者の現在地

テクノロジーは、何かの民主化だ

Qまず、現在どのような事業を展開されているのでしょうか?

AI×ブロックチェーン領域の事業開発と、ソリューション提供を行っています。戦略立案だけでなく、トークン設計、ステーブルコインを使った金融インフラ、スマートコントラクト開発まで、企画から実装・運用までを一気通貫で支援しています。

最近は特に、ステーブルコイン、RWA、AIエージェント決済など、ブロックチェーンを実際の金融・企業活動に組み込む領域に注力しています。

創業から約4年で、グループ累計300件以上・41カ国以上のプロジェクトを支援しており、国内のブロックチェーン領域ではおそらくトップの支援実績です。

さらにM&Aも進めて、開発会社やブロックチェーン企業をグループ化しました。コンサルだけではなく、自分たちで実装できる技術・開発組織を拡大しています。グループインしたと公表されているのは、キリフダ株式会社(2026年2月発表)、Kenpal株式会社(2026年4月6日発表)、そしてKomlock lab株式会社の3社です。

Qなぜ、ブロックチェーンだったのでしょうか?

金融を民主化していくインフラだからです。金融行為が、誰でもできるようになります。その一連の流れだと捉えています。

テクノロジーは何かの民主化だと思っているんです。インターネットは、メディアの民主化でした。テレビ・ラジオしかなかったところから、SNSやHPで誰でも発信できるようになりました。

例えばナイジェリアでは、自国通貨の下落や銀行への不安もあって、暗号資産を利用している人の8割前後がステーブルコインを保有しているという調査があります。日本人がPayPayを持っているような感覚です。戸籍がない子でも、資産を持つことができます。

ステーブルコインは価格の安定性を実現するように設計された暗号資産ですが、その年間送金額は33兆ドルにのぼります。VISAの取引高が16兆ドル、Mastercardが10兆ドルですから、それを超えています。

世界中でブロックチェーンを基盤とした金融が活用されています。日本は金融インフラが整っているので、あまり必要性を感じないだけなんですよ。

Q「金融の民主化」というのは、岩﨑さん独自の見立てなのでしょうか?

いえ、私だけが言っていることではありません。

Bloomberg、World Economic Forum、Coinbase、a16z、それから世界最大の資産運用会社であるBlackRockも、同じ言葉を使っています。

面白いのは、既存金融を代表する側から出てきていることです。かつてテレビ局や新聞社は、自分たちの特権が民主化されるとは思っていなかったと思うんですよ。それと同じことが、いま金融で起きています。私が重く見ているのは、そちらの事実のほうです。

Qでは、なぜ日本ではブロックチェーンの普及が遅れているのでしょうか?

日本の金融機関、及び働いている人々が、とてつもなく優秀で誠実だからです。

これは日本を責める話ではありません。海外では、自国通貨はどうせインフレするからビットコインのほうがマシだ、とか、銀行に預けても横領されるかもしれない、といった声を実際に聞きます。東南アジアで起業したら銀行が倒産して経営できなくなった、という話もありました。レバノンでは、預金者が自分の資産を取り返すために銀行を襲う事態にまでなっています。

日本では、ブロックチェーンがなくても人力でガバナンスを効かせてこられました。これは、先人が遺してくれた優秀さの証拠だと思っています。

ただし、世界の金融取引のスタンダードがオンチェーンに移るのなら、日本だけがそこに乗らなければ、またグローバリゼーションの波に取り残されてしまいます。そうならないように防衛するのが、Pacific Metaの役目です。

QPacific Metaならではの強みは、何でしょうか?

一番の特徴は、「ブロックチェーンをどう使うか」を提案するだけでなく、本当に社会実装するところまでやることです。

国内外で300件以上のプロジェクトに関わっていて、日本と世界双方のネットワークと事例を持っていることも強みです。会社として掲げてきたのも「日本からブロックチェーンのスタンダードを創る」という思想でした。

さらに2026年からは、AIとブロックチェーンを別々の技術ではなく、セットで捉えています。AIが判断や業務を担い、ブロックチェーンがお金・契約・価値交換を担います。そうすることで「AIが経済活動まで実行できる世界」を見ています。

あとは、自社を実験場にしていることですね。AIやステーブルコインを実際に自分たちで導入して、そこで得た知見をグループ会社、さらに顧客企業へ展開しています。「自分たちで使ってから売る」というモデルです。

Q「日本と世界双方のネットワーク」というのは、やはり強みなのでしょうか?

実は、そこはあまり強みとして語りたくないところなんです。

私たちはよく「グローバルな知見」を当社の強みとして紹介していますが、実はこれは強みというよりも、ブロックチェーン事業を行う上での「当たり前」のことだと考えています。

Q2025年1月のシリーズAでは、海外のトッププレイヤーが株主に入っています。これは、どういう狙いだったのでしょうか?

Pudgy PenguinsのCEOや、The Sandboxの共同創業者などに入っていただきました。

ただお金を集めるだけであれば、彼らから出資をしていただく必要はありませんでした。自社の株を買ってもらうことで、インナーサークルに入っていく姿を、自分たちで体現したかったんです。

QAIとブロックチェーンを「セットで捉える」とは、どういうことでしょうか?

この2つは、互いに欠けているところを埋め合う関係なんです。

ブロックチェーンには、「何をすべきか判断する知性」がありません。逆に、AIが読んで判断し、スマートコントラクトが実行し、ブロックチェーンが記録して誰でも検証できる。この一気通貫のループが成立して初めて、「AIが経済活動まで実行できる世界」が立ち上がります。

QAIが勝手に動いてしまうリスクは、どう考えていますか?

「暴走しない自律」を設計できることが、ブロックチェーン×AIの本質的な強みだと思っています。

AIの権限を契約側であらかじめ縛って、全行動をオンチェーンに記録する。いま開発している資産運用エージェント「AutoFund」も、操作範囲と日次の上限を制約する設計にしています。

Q「自分たちで使ってから売る」というのは、実際にどこまでやられているのでしょうか?

ステーブルコインで海外の取引先に支払って、余剰資金をオンチェーンの金融サービスで運用しています。この業界でも、ここまでやっている会社は滅多にないと思います。

私たちが届けるのは、自分たちが使って本当に効果のあったものだけです。これを原則にしています。

この考え方は、2026年4月7日に「AI×ブロックチェーン成長戦略」として公表しました。自社の「経営OS」をAI×ブロックチェーンで刷新する自社実践と、M&Aで強化した開発力をグループ各社へ展開するグループ実証。この二本柱です。

ブロックチェーンネイティブである私たちだからこそ形にできる「経営OS」があると確信しています。

Q今後、実現したいことは何ですか?

ミッションは「To Create the Standard for Blockchain from Japan(日本からブロックチェーンのスタンダードを創る)」です。日本企業が世界で再び大きく挑戦できる環境を、ブロックチェーンという新しい産業からつくろうとしています。

直近で注力しているのが、オンチェーン金融です。決済、預金、投資などの金融行為が、ブロックチェーン上で直接取引される一連の流れです。オンチェーン金融上の取引はAIが実行主体になることも多く、爆速で普及している領域です。我々は日本でのオンチェーン金融の普及を実現します。

Q「経営OS」という構想は、どこから出てきたのでしょうか?

壮大な構想から入ったわけではないんです。10年近く経営をやってきた、自分自身の実感が出発点でした。

組織は大きくなるほど、徹底することが難しくなります。そして経営者は、本来いちばん注力すべき意思決定の時間を、情報収集と社内調整に奪われていきます。

これらは経営者なら誰もが抱える構造的な課題です。「もっと頻度を上げて確認する」や「もっと優秀な人材を採用する」では、根本的には解決しません。

岩﨑 翔太
学生で起業するのが、一番リスクがないと思った。20歳の決断に、迷いはなかった。
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SECTION 02 | あなたの原点

学生起業が、一番リスクがないと思った

Q学生時代は、どんな学生でしたか?

東京大学の3年のときに、株式会社終活ねっとを創業しました。2016年です。

起業家という生き方があることを知って、迷わずに選びました。

学生で起業するのが、一番リスクがないと思いました。休学費が無料で、ノーリスクでできると考えたんです。社会人になってからの起業だと、いろいろと考えないといけないことがありそうだな、と思いました。

Q1995年に兵庫県で生まれ、灘高校から東京大学へ進まれています。ご家族に、経営者の方はいらっしゃったのでしょうか?

いえ、私の親族に経営者や、東京でバリバリ働くような人はいません。

決して裕福ではありませんでしたが、両親は教育にはお金をかけてくれました。

そして私には、物事を長期的に考えるクセがあるんです。将来どう過ごすか、そのとき自分がどう感じるか。子どもの頃から、自ずと考えてしまう性質でした。それが、将来のお金への不安に直結していたんだと思います。

その不安をなくすために、好きでもない勉強に取り組み、東京に上京しました。

Q東京で、何と出会ったのですか?

スタートアップです。

全く資産のない自分でも、志さえあれば資金調達ができて挑戦ができることを知りました。当時20歳だった私は、それを知った瞬間に、一切の迷いもなく起業を決意しました。

いま振り返れば、のちに「金融の民主化」へ人生を賭けることになる理由は、すでにここにあったのだと思います。

Qその後、わずか2年で売却されていますね。そこからは、どんな歩みだったのでしょうか?

2017年に通算1億円の資金調達を実施して、2018年に大手IT企業グループへM&Aで売却しました。テレビCMも実施しています。

終活ねっとは月間1,000万PVまで伸び、終活領域でNo.1のメディアになりました。

Q1度目の起業を、ご自身ではどう総括されていますか?

成功物語だとは思っていません。

当時目指していたのは「終活界のゼクシィ」でした。オンラインでお葬式やお墓を手配できるサービスとして、日本の終活で一番使われる存在になる。月間1,000万PVという兆しも掴みました。

ただ、やはり多くの既存競合サービスの存在もあり、業界Topとまでは行きませんでした。我々の打ち手も競合に真似されていきます。

そこで学んだのは、よっぽどのことがない限り、既存マーケットの勢力図は決まっている、ということです。これが2回目の起業の前提になりました。

Q売却後は、どう過ごされたのでしょうか?

2年間は子会社の社長を務めて、退任後の1年ほどを悠々自適に過ごしました。

エンジェル投資などもちょくちょくやっていました。

動機は、スタートアップのエコシステムへの純粋な感謝です。1社に大きく張るより多くの会社に投資したいと考えて、投資先は結果的に40社を超えました。いまは累計60社です。

その投資活動から得た結論は、時代の最先端を歩むことは、ビジネスパーソンとしての人生を豊かにする、ということでした。そして、短期的なものに飛び付かず、時代が追いつくまでなんとか商売で食い繋いだ企業が真の勝者だ、とも思っています。

Q2022年に、Pacific Metaを創業されます。なぜ、ブロックチェーンに張ろうと思われたのでしょうか?

テクノロジーの中で最もポテンシャルがあり、かつ過小評価されているものに張りたいと思ったからです。それでブロックチェーンへ全力で張ることにしました。

海外がスタンダードであれば、日本はいつか追いついていくと考えていました。

判断の軸は3つです。市場が伸びるかという市場性、競合がいないかという競合性、自分たちができるかというケーパビリティです。ビジネスは、マーケット・競合・ケイパビリティの3点で勝負が決まると考えています。

Q2回目の起業では、領域選定に最も時間をかけられたのでしょうか?

はい。スタートアップのアップサイドは領域が決めるといっても過言ではないからです。

企業の成長は「領域選定」と「経営能力」に分解できると思っています。ローサイド、つまり最低限の成功は経営能力に依存します。一方でアップサイド、つまり上振れは領域選定に依存する。経営能力が高くても、選んだ領域が悪ければ奇跡のような企業は作れません。

面白いことに、良い領域が人を育てます。会社が軌道に乗る兆しが見えれば、成長に追いつこうとチームが努力して、さらに会社が伸びる。その好サイクルの中で、経営能力は後からついてくるんです。

経営能力が高くても、後から領域は変えられません。でも良い領域で勝負していれば、後から経営能力は手に入る。そう考えています。

自由になった時にやってしまうことが、好きなことなんですよ。

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SECTION 03 | 人生・経営の転機

自由になった時にやってしまうことが、好きなこと

Q今の自分をつくった、最も大きな転機は何でしょうか?

終活ねっとを売却したあと、ニートをしていた時期です。

投資も知って、元本を極力保証した状態での投資ができるようになりました。

待ちに待った悠々自適タイムではあったんですが、意外と楽しくありませんでした。終活ねっとをやっていた時より、楽しくなかったんです。

Q1回目の起業を終えた直後は、どんな気持ちだったのでしょうか?

正直に言うと、「2度とこんなに大変で責任の重いことなんてしたくないよー😭」という気持ちでした(笑)。

不動産や金融も勉強して、投資の道に進むことも考えました。悩むこともありましたし、小さな撤退を繰り返すこともありました。

それでも、エネルギーのぶつける先がないままに何年間もじっとしていられるわけもなく、再び起業を志すようになりました。

Qそこで、何に気づいたのでしょうか?

自由でなくとも頑張っている時の方が、金と時間があるよりも好きなんだな、と気づきました。一定のストレスがあって、挑戦している方がいいなと思いました。

本当に楽しいこと、本当に好きなことがわかったんです。

自由にならないと、本当にしたいことはわかりません。自由になった時にやってしまうことが、好きなことなんですよ。

僕の中での自由の定義は、時間があることと、お金のために働かなくて良いことです。その自由を手にして、それでも起業したいと思ったので、起業がやりたいことなんだな、とわかりました。

結局、起業家・経営者として社会に価値ある会社を作ること以上にワクワクすることはない、という結論に至りました。投資も楽しいんですけどね。自分でもやりたくなっちゃうんですよ。

ただ、起業するにしても、なんでも良いわけではありません。自分にしかできないことをやりたいんです。モメンタムがある状態で大きな挑戦をすることが好きですし、新しいテクノロジーに張ることが好きなんです。

Q2度目の起業に向かうときの心境は、1度目とは違いましたか?

全然違いました。2回目の起業に際しての僕の心境は「慎重」でした(笑)。

絶対に失敗しない、という構えです。

ただ、狙う規模は上げました。2回目の起業は1回目とは比べ物にならないくらい大きなことをしたいと、心に決めていたんです。奇跡のような会社を作りたいというのが、無邪気な気持ちでした。

ちなみに終活ねっとの社員4名、うち経営陣2名が、Pacific Metaに合流してくれています。

Qその経験で、価値観はどう変わりましたか?

社会を変えるような会社を仲間と作ること以上に、楽しいことはないと思うようになりました。

もうひとつが、「挑戦は贅沢である」ということです。投資家もそうですし、従業員もそうです。ついてきてくれる人がいるんです。挑戦できること自体が、贅沢なんですよ。

これは最近思いついたことではなくて、2024年1月に初めて文章を書いたときから、ずっと同じことを言っています。

そもそも挑戦とは、贅沢な行為だと私は捉えています。そのため、最低限心の余裕が担保された状態で上振れを狙うのが良いと考えています。挑戦とは贅沢なのに、ストレスがかかりながらはもったいないと思うんですよ。

Qそれは、現在の経営にも影響していますか?

辛いことがなくなりますね。

思い通りにいかないことは、たくさんあります。でも、ゲームで倒せない敵が出てきてイラっとするのと同じなんです。

岩﨑 翔太
全くリスクを取りきれていない会社です——自らを「ビビリな会社」と呼ぶ。
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SECTION 04 | 失敗と乗り越え方

ハードシングスとは捉えていません。贅沢なので

Qこれまでで一番苦しかったことと、どう乗り越えたかを教えていただけますか?

ハードシングスとは捉えていません。贅沢なので。

自分のためにやっていると、文句や不平は出てこないんですよ。常時ハッピーです。

Q「常時ハッピー」でいられるのは、なぜなのでしょうか?

前提として、Pacific Metaはビビリな会社です。

Pacific Metaという会社は、全くリスクを取りきれていない会社です。私は本来ビビリな性格です。2度起業していますが、2回とも自分の中ではリスクはないと慎重に咀嚼した上で、起業を決断しています。

「不確実性に張ってアップサイドを狙うこと」と「リスクを抑えて最低限の成功を実現すること」は、両立すると思っているんです。投資家にはリターンを返したいし、従業員のキャリアも守りたい。つまり、失敗したくない自分がいます。

だからPacific Metaは、確実に存在する需要にフォーカスして、初期から収益を出すモデルを採っています。

当社は何よりも、ブロックチェーンの黎明期を、波が来るまで生き残ることを最優先にしています。生き残っていなければ、不確実性が吉と出た時の挑戦権すらありませんから。

Q生き残ることが最優先、ということでしょうか?

Coincheckの躍進が、まさにそうだと思っています。マーケットが来る遥か前から、なんとか生き残りながら仕込んでいた。だからこそ、あの躍進があったのだと見ています。

リスクをとる爆発的なエネルギーではなく、なんとか生き残る力で、このブロックチェーン領域に挑みます。

経営とは相対値で考えるべきだとも思っています。周りにリスクマネーを投じるプレイヤーが少なければ、自分との戦いをしていればいい。一番怖い敵は、損得勘定ができる優秀な敵ではなく、死を覚悟してリスクを取る敵です。

多産多死を受け入れにくい日本のエコシステムは、裏を返せば、黎明期を生き残ることが比較的容易な国だということになります。これは日本スタートアップの特権だと考えています。

Q逆に、賭けが外れる可能性はどう見ていますか?

もしかすると、日本でブロックチェーン市場がまったく成長しない可能性すらあります。これこそが、Pacific Metaの起業において私が受け入れた不確実性です。

もしその不確実性が凶と出た場合は、潔く今回の起業を失敗だと認めます。ひとえに私の判断力不足だと思います。

ただ間違いなく言えることは、その不確実性が吉とでて偉大な会社になれる期待値の方が遥かに大きい、ということです。

Qでは、この4年間のハイライトシーンを挙げるとしたら、何でしょうか?

ブロックチェーンが市民権を得てきた、という感覚があることです。

今までは黎明期でした。それが、政府が骨太の方針にブロックチェーンを使った金融を入れたり、3メガバンクがステーブルコインの発行を発表したりしています。

今年の2月にイベントをやったのですが、ビッグネームの方々が登壇してくれました。そういう変化を、肌で感じています。

Q2月のイベントというのは、どのようなものでしょうか?

「Blockchain Summit 2026」です。2026年2月25日に、クレディセゾンさん、Onigiri Capitalさんと共催しました。金融庁主導の「Japan Fintech Week 2026」の公式関連イベントとして実施しています。

登壇者は46名、当日は約550名が来場しました。テーマはステーブルコイン、RWA、デジタル証券。まさに、いま私たちが注力している領域です。

一番怖い敵は、損得勘定ができる優秀な敵ではなく、死を覚悟してリスクを取る敵です。

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SECTION 05 | 次世代へのメッセージ

AIを使いこなす人材が、経営人材になっていく

Q岩﨑さんはClaude公式アンバサダーも務められています。これから社会に出る若者に、最も伝えたいことは何ですか?

仕事はなくなるおそれがあります。

そのうえで、2種類の人材が必要になると思っています。ひとつは、AIで代替できない仕事をする人で、対人能力が強い人です。もうひとつが、AIを使いこなす人材で、ここが経営人材になっていきます。

Qかなり厳しい見立てですが、なぜそう考えるのでしょうか?

人とAIを比較したときに、人を雇う理由が薄れていくからです。だからこそ、AIを使いこなす側に立つ覚悟が必要だと思っています。

これは、さきほどの「経営OS」の裏返しでもあるんです。経営OSが前提になる世界で評価される人材は、AIを前提にした業務設計ができる人、AIでは代替できない判断や創造を担える人へと変わっていきます。組織の大きさではなく、データの質とAIの活用度が、企業の実力を決める時代です。

Q経営者としては、この変化をどう見ていますか?

正直、高揚しています。

資本力でも人員でもブランドでも、スタートアップが大企業に正面から勝つのは容易ではありません。しかし今、AIがその構造を根本から変えようとしています。小さくても機動力のある企業にこそ、千載一遇のチャンスがあると感じています。

最近は土日も、我を忘れてAIを触っていますよ。

Q厳しい見立てを語られる一方で、機会の話もされるのはなぜでしょうか?

はい。社会に貢献する者や志がある者には適切な機会やインセンティブが与えられるべきではあると考えており、それが僕の価値観です。

世の中には、能力や志があるのに、機会に恵まれていない人々が大量にいます。

なぜ「金融の民主化」なのか、という話にも戻ってくるのですが、資本主義社会において資産は、生きていくための手段であり、自分と家族の生活を守るものでもあります。金融が民主化するというのは、より多くの人がその資産を持てるようになるということです。

私自身が、その恩恵を受けた一人なんですよ。このスタートアップのエコシステムがなければ自分は起業ができなかったわけで、ある意味、金融の民主化が進んでいる恩恵といえるでしょう。一昔前に生まれていたら、私は挑戦機会すらなかったかもしれないのです。

岩﨑 翔太
小さくても機動力のある企業にこそ、千載一遇のチャンスがある。

EDITOR'S NOTE / 編集後記

仕事はなくなるおそれがあるという予測と、志がある者には機会が与えられるべきだという価値観は、一見すると噛み合わない。ただし岩﨑さんの中では、この2つは矛盾していない。ルールが変わる時代に、機会の側に立ち続けられるかどうかが問われている。

自由になった時にやってしまうことが本当に好きなことだと気づいたから、岩﨑さんはもう一度、起業を選んだ。金も時間もある悠々自適より、一定のストレスの中で挑戦しているほうがよく、倒せない敵にイラっとするのはゲームと同じだという。

「挑戦は、贅沢である」という言葉のとおり、その贅沢を長く味わうために、自らを「ビビリな会社」と呼び、黎明期を生き残ることを最優先に置く。本人の言葉を借りれば「堅実経営で生き残りながら、アップサイドを狙うというワガママ企業」である。

インターネットがメディアを民主化したように、ブロックチェーンは金融を民主化する。公式プロフィールには「不確実な領域にこそ、次のスタンダードがある」と掲げられている。日本からそのスタンダードを創るという挑戦のただ中に、岩﨑さんはいる。

岩﨑 翔太株式会社Pacific Meta 代表取締役

株式会社Pacific Meta 代表取締役CEOを務める。1995年に兵庫県で生まれ、灘高校を経て東京大学に進む。在学中の2016年、大学3年時に株式会社終活ねっとを創業し、月間1,000万PVまで成長させて終活領域No.1に育てた。2017年に通算1億円の資金調達を実施し、2018年に大手IT企業グループへM&Aで売却した(テレビCMも実施)。売却後は2年間の子会社社長を経て退任した。2020年に「Forbes 30 Under 30 Asia」に選出され、同年よりエンジェル投資家としての活動を開始し、累計60社へ投資している。2022年に株式会社Pacific Metaを創業した。AI×ブロックチェーン領域で、戦略立案からトークン設計、ステーブルコインを用いた金融インフラ、スマートコントラクト開発までを一気通貫で支援し、グループ累計300件以上・41カ国以上のプロジェクトに関わる。2026年にはキリフダ、Kenpal、Komlock labの3社をグループに迎え、同年Claude公式アンバサダーに就任した。掲げる言葉は「不確実な領域にこそ、次のスタンダードがある。ブロックチェーンとAIで自律的経済圏を実現する」で、ミッションは「To Create the Standard for Blockchain from Japan(日本からブロックチェーンのスタンダードを創る)」である。

株式会社Pacific Meta

2022年8月に創業。AI×ブロックチェーン領域の事業開発とソリューション提供、アクセラレーション支援を手がける。シリーズAで約6.6億円、累計で約10億円を調達している。2025年1月公表のシリーズAでは、既存投資家のDimension、15thRockに加え、Pudgy Penguins CEOのLuca Netz氏、STEPN CROのMable氏、The Sandbox共同創業者のSebastien Borget氏、スタンフォード大学経営大学院のGary Mao氏ら海外のトッププレイヤーが出資に参加した(肩書きはいずれも2025年1月当時)。

会社HP: https://pacific-meta.co.jp/

代表note: https://note.com/iwasaki0614

SNS: https://x.com/PacificMeta_ja

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