「啓発・啓蒙だけでは、限界がある」——食の現場を歩いてきた料理人が、食品ロス削減を”社会の仕組み”に変えるまで – ZEROWORKS(ゼロワークス)
EXECUTIVE INTERVIEW
No.021
EXECUTIVE INTERVIEW

約3,500店舗、継続率95%

COMPANY
株式会社コークッキング
NAME
川越 一磨
CATEGORY
飲食・食品
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53 Views#TABETE#食品ロス#フードシェアリング#社会システムに組み込む#エンプラ開拓

「啓発・啓蒙だけでは、限界があると思ったんです」

大学在学中から続けた、和食料理店での修行。

新卒で飛び込んだ、外食企業サッポロライオン。

山梨県富士吉田市で立ち上げた、コミュニティカフェ。

一貫して「食と人の現場」を歩いてきた川越一磨さんが立ち上げたのは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品を、ユーザーが「レスキュー」するフードシェアリングサービス——『TABETE』でした。

導入店舗は約3,500。継続率は9割を超えます。

それでも川越さんは、「大きなムーブメントには、まだしきれていない」と語ります。

もったいないと呼びかけるのではなく、社会システムに組み込む。

一過性のブームで終わらせず、一般化させる。

食品ロス削減の「その先」を見据える川越さんに、転機と構想を伺いました。

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SECTION 01

約3,500店舗、継続率95%。『TABETE』の現在地

Q現在は、どのような事業を行っていますか?

フードシェアリングサービス『TABETE』を運営しています。

現在、約3,500店舗に導入いただいています。

『TABETE』は、閉店間際などに余ってしまった商品を、店舗が出品し、ユーザーがアプリで「レスキュー」できる仕組み。

導入店舗の内訳は、6割がチェーン、4割が個人店です。

継続率は、個人店で90数%、チェーンで95%です。

一度導入した店舗が、ほとんど離脱しない。

その裏側には、独特な組織体制があります。

営業は、大手のみを担当する2名だけなんです。

メインはプロダクト改善で、そこに5名くらいのメンバーがいます。

営業部隊を拡大するのではなく、店舗が使い続けたくなるプロダクトを磨き込む。

9割超の継続率は、その方針の結果でした。

02
SECTION 02

転機は2017年——研修事業から、TABETEへ

大学卒業後、サッポロライオンでの現場経験を経て、富士吉田市でコミュニティカフェを運営。

2015年12月、川越さんは株式会社コークッキングを創業します。

ただし、最初の事業は『TABETE』ではありませんでした。

Q創業当初から、いまの事業だったのでしょうか?

いえ、最初は研修事業をやっていました。

私たちはもともと「価値創造型」——課題がないところにソリューションを作るタイプの会社で、組織内の課題を解決する研修を提供していたんです。

Qそこからなぜ、食品ロスの領域へ?

最も大きな転機は、2017年です。

もともと社会課題の解決に興味があって、その方向に行きたいという想いがありました。

そのなかで、食品ロスの啓発・啓蒙をやりたいと思うようになったんです。

川越 一磨
啓発・啓蒙だけでは、限界があると思いました。
03
SECTION 03

「啓発だけでは限界がある」——社会システムに組み込むという決断

食品ロスの啓発・啓蒙。

しかし川越さんは、すぐにその先の壁に気づきます。

啓発・啓蒙だけでは、限界があると思いました。

だったら、ロス削減が自然に回る仕組みを、社会システムそのものに組み込むしかない。

そのために立ち上げたのが『TABETE』でした。

「もったいない」と呼びかけるのではなく、余った食品が当たり前に売り買いされる仕組みをつくる。

研修事業からの大きな転換でした。

Q当時は、どんな未来を描いていましたか?

大きなムーブメントにしていこう、と思っていました。

ただ正直に言うと、まだ大きなムーブメントにしきれていない感覚があります。

Q3,500店舗まで広がっても、まだ道半ばだと。

社会課題解決と言っている割には、社会課題がまだ残っていますから。

一過性のブームはありました。いまは、それが一般化されていくフェーズだと捉えています。

長期目線で、本当に解決の方向に向かっていくのか——それが、今でも考え続けていることです。

04
SECTION 04

次の壁は、エンプラ開拓——「値引き一辺倒」からの打開

Q食品ロス削減を「一般化」させるために、いま一番の経営課題は何ですか?

エンタープライズの開拓です。

大企業を巻き込まないといけない、と強く思っています。

値引き一辺倒のロス削減が業界に影響を与えているなかで、そこからどう打開するか。

新たなビジネスモデルの創造が必要だと考えています。

Q具体的には、どんな連携が突破口になりそうですか?

例えばPOSシステムとの連動ですね。

お店の業務効率化のような領域との、オープンイノベーション的な連携の話は最近よくしています。

取材では「ぜひ一度会ってみたい」という企業名として、POSレジを手がける東芝テック、エアレジ、スマレジの名前が挙がりました。

店舗のレジ・受発注データと食品ロス削減がつながったとき、次のステージが見えてきます。

川越 一磨
まず、いまの約3,500店舗を10,000店舗に持っていきたい。
05
SECTION 05

10,000店舗と、「余りにくい仕組み」へ

Q今後、実現したいことを教えてください。

まず、いまの約3,500店舗を10,000店舗に持っていきたい。

もう一つは、お店向けに受発注管理など「余りにくい仕組み」を整えていくことです。

中食・小売向けのSaaSとして、開発・開拓を進めていきたいと考えています。

余った食品を「レスキュー」する『TABETE』から、そもそも余らせない仕組みづくりへ。

食品ロス対策の、さらに上流への挑戦です。

廃棄の手前で救うだけでなく、ロスが生まれにくい構造そのものをつくる。

「社会システムに組み込む」という2017年の決断は、いままっすぐに延長線を伸ばしています。

06
SECTION 06

「チャレンジをやめない」——自分の価値を上げ続ける

Qこれから社会に出る若者に、最も伝えたいことは何ですか?

今も昔も変わらず言えるのは、「今の方がチャレンジしやすい環境になっている」ということです。

社内での挑戦でも、起業でもいい。

自分の価値を上げることに貪欲になった方が、人生を楽しく過ごせると思います。

壮大な夢を持つ必要はありません。

自分が楽しいと思える範囲で、自分を磨き上げることに常に力を注いでいったらいい。

その言葉の背景には、危機感もあります。

それができなくなった40代〜50代が、大量にいるんです。

自分の価値を上げずに、レールの上をただただ走ってきただけの人は、会社の中にいても価値を発揮できない。

雇用の流動性は、これからも上がっていきます。

ずっと一つの会社に勤め上げるキャリアプランではなくなる。

年収を上げたいときに上げるためには、自分の価値を上げ続けるしか方法がないんです。

Q最後に、20代に向けて一言お願いします。

チャレンジをしていくことを、やめない。

これが20代では、特に重要だと思います。

EDITOR'S NOTE / 編集後記

取材で最も印象的だったのは、約3,500店舗・継続率95%という実績を語りながら、「まだ大きなムーブメントにしきれていない」と自らに厳しい評価を下す姿勢でした。

啓発ではなく、社会システムへの組み込みを選んだ2017年。

そしていまは、「余った食品を救う」から「そもそも余らせない」へ、課題のさらに上流に踏み込もうとしています。

一過性のブームを、一般化へ。

社会課題の解決を口にする企業は多くても、「課題がまだ残っている」と言い続けられる経営者は多くありません。

食の現場から始まった川越さんの挑戦を、これからも追いかけたい取材でした。

川越 一磨株式会社コークッキング 代表取締役

2014年慶應義塾大学総合政策学部卒業。在学中から和食料理店で修行し、卒業後は株式会社サッポロライオンに入社。退職後、山梨県富士吉田市に移住しコミュニティカフェの立ち上げ・運営に携わる。2015年12月に株式会社コークッキングを創業。

2017年の転機を経て、フードシェアリングサービス『TABETE』を展開。現在約3,500店舗に導入され、継続率は9割を超える。今後は10,000店舗への拡大と、受発注管理など「余りにくい仕組み」(中食・小売向けSaaS)の開発を目指す。

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